iOS、iPadOS、および tvOS ゲームを公開するには、自身が有効な Apple デベロッパーであることを証明する コード署名証明書 と、アプリに必要なサービスおよび権限を識別する プロビジョニング プロファイル が必要です。Xcode では、コードをビルドするためのこのプロセスが自動的に管理されますが、Unreal Engine のプロジェクト設定では、Unreal Engine のビルド システムがプロジェクトをクックおよびパッケージ化できるようにこれらを手動で処理する必要があります。このガイドでは、有効な証明書およびプロビジョニング プロファイルをセットアップするのに必要なすべての手順を説明します。
このガイドは、macOS および Xcode を使用し、Unreal Engine の C++ プロジェクトをビルドする完全なセットアップに対応しています。プロジェクトをビルドして App Store でシッピングするには、Xcode を備えた macOS マシンが必要ですが、Unreal Engine には、開発およびテストを目的として iOS アプリをビルドする複数の他の方法が用意されており、これには Windows で作業する方法も含まれます。詳細については、「付録 B:追加のビルド オプション」を参照してください。
1. 概要および要件
iOS、tvOS、または iPadOS デバイス向けに Unreal Engine プロジェクトをビルドして配信するには、次の要件を満たす必要があります。
- macOS を実行するコンピュータ。
- お使いの Unreal Engine のバージョンに対応した Xcode のインストール。
- Apple Developer アカウント。
- Unreal Engine プロジェクト。
Unreal Engine の現在のバージョンとともに使用する必要がある macOS および Xcode の詳細については、iOS、iPadOS、および tvOS の開発要件 のページを参照してください。Unreal Engine と連携するように Xcode をセットアップする方法については、「iOS クイックスタート ガイド」の説明を参照してください。
コード署名証明書とプロビジョニング プロファイルを作成するには、Apple Developer アカウントが必要です。Apple ID と Apple Developer アカウントをまだお持ちでない場合は、developer.apple.com を参照して作成してください。
Epic のソフトウェアは無料で提供されていますが、Apple Developer アカウントには年間 $99 の料金がかかります。アカウントの登録時にはこの点に注意してください。
最後に、Apple Developer アカウントで以下を実行する必要があります。
- Xcode を Developer アカウントと関連付ける。
- アプリ用の 識別子 (App ID) を作成する。
- アプリをデプロイするための プロビジョニング プロファイル を作成する。
- アプリの作成者として自身を証明する 署名証明書 を作成する。
- iOS デバイスをアカウントに登録する。
これらの各コンポーネントを準備したら、プロビジョニング プロファイルと署名証明書をダウンロードし、[Project Settings (プロジェクト設定)] に追加する必要があります。その後、プロジェクトをパッケージ化し、デバイスにプッシュできます。以降のセクションで、これらの各ステップについて詳しく説明します。
2. Xcode を Apple Developer アカウントと関連付ける
証明書とプロビジョニング プロファイルが正しく認識されるようにするには、Xcode を Apple Developer アカウント用の Apple ID と関連付けます。
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Xcode を開き、[Xcode] > [Preferences (環境設定)] をクリックします。
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[Accounts (アカウント)] タブをクリックします。
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アカウントを追加するには、[+Add (+追加)] をクリックします。Apple Developer アカウントの情報を入力します。
3. 識別子 (App ID) を作成する
すべての iOS アプリには、バンドル ID を使用した識別子が必要です。この情報は、後の手順でプロビジョニング プロファイルによって参照されます。識別子を作成するには、以下の手順に従います。
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お使いの Apple Developer アカウント にログインします。
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[Certificates, Identifiers, and Profiles (証明書、識別子、およびプロファイル)] を開きます。
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[Identifiers (識別子)] をクリックし、[Register an App ID (App ID を登録)] をクリックします。
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[App IDs (アプリ ID)] を選択し、[Continue (続行)] をクリックします。
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[App (アプリ)] を選択し、[Continue] をクリックします。
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[Register an App ID (アプリ ID を登録)] メニューで、[Description (説明)] と [Bundle ID (バンドル ID)] を入力します。バンドル ID については、リバース ドメイン形式 (
com.(OrganizationDomainName).(AppName)
) で文字列を指定する必要があります。この例では、アプリ名は「com.YourCompany.MobileTestGame
」です。[App ID] に入力したアプリケーション名を記録しておきます。これは、この情報と Unreal Engine プロジェクトの名前が一致する必要があるためです。具体的に、拡張子のない
.uproject
の名前が必要です。また、バンドル ID は、Xcode プロジェクトと Unreal Editor の [Project Settings (プロジェクト設定)] の両方で一致している必要があります。 -
アプリに必要な任意の権限およびサービスを選択し、[Continue] をクリックします。
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すべての設定が正しいことを確認し、[Register (登録)] をクリックします。
4A.Xcode からコード署名証明書を生成する
Xcode を Apple Developer アカウントと関連付けたら、以下の手順を実行し、Development Certificate (開発用証明書) を自動的に生成することができます。
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プロジェクトのソリューションを Xcode で開き、ナビゲーション パネルでプロジェクトを選択します。これにより、プロジェクトの設定が表示されます。
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[General (全般)] 設定で、プロジェクトのバンドル ID を入力します。これは、リバース ドメイン形式の文字列であり、表記は com.(OrganizationName).(ProjectName) となります。この例では、
com.YourCompany.MobileTestGame
となっています。 -
[Signing and Capabilities (署名および機能)] をクリックします。[Team (チーム)] は Apple Developer プロファイルによって付与された名前に設定します。
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[Automatically Manage Signing (署名を自動的に管理)] を有効にします。Xcode は Apple Developer サイトに接続し、開発用のコード署名証明書を生成します。
この証明書は構成を行った Mac のみで利用可能であり、開発のみに利用できます。シッピングには利用できません。
4B.署名証明を手動で生成する
Xcode によって生成された開発証明書を使用すると、プロジェクトをテスト用にデプロイできます。しかし、プロジェクトをシッピングするには、App Store での配信用に構成された署名証明書を作成しなければならない場合があります。また、他のデバイスでチームが利用できる証明書を作成しなければならない場合もあります。
Apple Developer アカウントで手動で証明書を作成するには、次の手順に従います。
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Keychain Access アプリを起動します。[Keychain Access (キーチェーン アクセス)] > [Certificate Assistant (証明書アシスタント)] > [Request a Certificate From a Certificate Authority (認証局からの証明書をリクエスト)] をクリックします。
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[Certificate Information (証明書の情報)] ダイアログで、Apple Developer のメール アドレスと名前を入力します。[Continue] をクリックし、デスクトップなどの任意の場所に署名リクエストを保存します。
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Apple Developer ページ を開きます。[Certificates, Identifiers, and Profiles] メニューで、[Certificates (証明書)] をクリックし、[Create a Certificate (証明書を作成)] をクリックします。
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[iOS App Development (iOS アプリの開発)] を選択し、[Continue] をクリックします。アプリのシッピングのための証明書を作成する場合は、代わりに [iOS Distribution (App Store and Ad Hoc) (iOS の配信 (App Store およびアド ホック))] を使用する必要があります。
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[Choose File (ファイルを選択)] をクリックし、生成した 署名証明書リクエスト ファイル を選択します。[Continue] をクリックして証明書を生成します。
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証明書をダウンロードして開き、システム キーチェーンに追加します。
6. プロビジョニング プロファイルを作成する
アプリのプロビジョニング プロファイルにより、Apple Developer としての ID、テスト デバイスに関する情報、およびアプリの利用資格自体に関する情報が結び付けられます。プロビジョニング プロファイルを作成するには、以下の手順に従います。
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Apple Developer ページの [Certificates, Identifiers & Profiles (証明書、識別子およびプロファイル)] メニューで、[Profiles (プロファイル)] をクリックし、[Generate a Profile (プロファイルを生成)] をクリックします。
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[iOS App Development (iOS アプリの開発)] を選択し、[Continue] をクリックします。
このページでは例として iOS アプリを使用していますが、ターゲット デバイスに適切なプロビジョニング プロファイルのタイプを選択できます。たとえば、tvOS アプリを作成する場合は、[tvOS App Development (tvOS アプリの開発)] を選択します。
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[App ID] ドロップダウンをクリックし、前のセクションで生成した App ID を選択して [Continue] をクリックします。
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前のセクションで生成した 開発 用の 署名証明書 を選択し、[Continue] をクリックします。
チームで署名証明書とプロビジョニング プロファイルを共有する必要がある場合は、証明書を手動で作成します。
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登録済みのデバイスをテスト デバイスとして選択し、[Continue] をクリックします。
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[Provisioning Profile Name] に名前を入力します。この例では、プロファイルの名前は「MobileTestGame_Development」となっています。[Generate (生成)] をクリックします。
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プロビジョニング プロファイルをダウンロードし、任意の場所に配置します。そのプロファイルをクリックして Dock の Xcode アプリ アイコンにドラッグし、インストールします。
7. プロビジョニング プロファイルと署名証明書を Unreal Editor に追加する
Xcode でコードの署名を自動的に管理するよう設定すると、コードをビルドするためのプロビジョニング プロファイルは不要になります。しかし、Unreal Engine のビルド システムと iPhone Packager では、プロジェクトの iOS 用実行可能ファイルをクックおよびパッケージ化するためにプロビジョニング プロファイルと署名証明書を参照する必要があります。次の手順に従って、プロビジョニング プロファイルと署名証明書を Unreal Engine のプロジェクト設定に指定します。
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Unreal Editor を開き、[Project Settings] > [Platforms (プラットフォーム)] > [iOS] を開きます。[Bundle Identifier (バンドル ID)] に Xcode および Apple Developer アカウントと同じ名前が設定されていることを確認します。
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エディタでプロビジョニング プロファイルと署名証明書が認識されるまでしばらく待ちます。プロビジョニング プロファイルと証明書の両方のエントリが緑色になった場合は、有効なプロファイルとして認識されており、それらが自動的に使用されます。チェック ボックスをオンにし、これらを手動で設定することもできます。
ブループリントのみのプロジェクトやリモート ビルドでは、Windows マシンでこのセクションの手順を実行できます。
[Project Settings] で選択する署名証明書は、プロビジョニング プロファイルの生成に使用したものと一致する必要があります。一致しない場合、プロジェクトのパッケージ化は失敗します。
8. プロジェクトをパッケージ化する
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iOS 向けにパッケージ化するには、[Platforms] > [iOS] > [Package Project (プロジェクトをパッケージ化)] をクリックします。すべての設定が正しく、プロビジョニング プロファイルと署名証明書の両方が有効な場合、UE では iOS のビルドが作成されます。
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[Platforms] ドロップダウンを再度クリックします。お使いの iOS デバイスが [Quick Launch (クイック起動)] オプションに表示された場合は、それを選択するとビルドが直接デバイスにデプロイされます。
最終結果
このガイドの手順に従うことで、iOS プロジェクトのビルドおよび配信に必要なすべてのコンポーネントが揃いました。テストまたはシッピング用にプロビジョニング プロファイルを作成する必要がある場合は、このガイドを再度参照し、内容に従って ID、証明書、およびプロビジョニング プロファイルを構成してください。
付録 A:Apple Worldwide Developer Relations (WWDR) 証明書を取得する
Apple は、アプリをビルドするための Apple Worldwide Developer Relations 証明書 を必須としています。これは、Xcode によって自動的に提供されますが、Mac に手動でインストールしなければならない場合もあります。
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Apple の Certificate Authority Page (証明書認証ページ) にアクセスし、最新の WWDR Intermediate Certificate (WWDR 中間証明書) をダウンロードします。
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Keychain Access アプリを起動して、証明書を [System keychain] にドラッグします。
付録 B:追加のビルド オプション
このガイドで説明しているのは、アプリの配信に必要な署名およびプロビジョニングの完全なプロセスです。開発時およびテスト時には、次のような他の複数のオプションを利用できます。
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ブループリントのみの iOS プロジェクトでは、ビルドをパッケージ化するため、またはテスト用にビルドをデバイスにプッシュするために署名およびプロビジョニング プロセスを完了する必要はありません。すぐに直接パッケージ化することができます。この方法は、Windows でも利用できます。詳細については、「Windows で iOS をビルドする」を参照してください。
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Unreal Engine を利用しているチームのほとんどが開発用に Windows マシンを使用しているため、リモート ビルド プロセスを利用できます。これによって macOS デバイスとの安全な接続が作成され、ビルドが自動化されます。詳細については、「Windows で iOS をビルドする」のガイド を参照してください。
付録 C:署名証明書をチームで共有する
UE 5.3 以降では、自動コード署名は、開発ビルドで署名証明書を処理するために優先されている方法です。チームには、Xcode で各チーム メンバーが接続可能な共有された Apple Developer アカウントがあります。これにより、メンバー全員に、リソースの署名とプロビジョニングに共有アクセスが提供されます。
手動で作成された署名証明書またはプロビジョニング プロファイルを共有する必要がある場合は、「Provisioning」という名前の UE のプロジェクト ディレクトリ内にフォルダを作成し、そのフォルダにこれらを配置します。これらはビルド プロセスには必要ありませんが、これらをチームのソース コントロールに追加して必要に応じて共有することが可能です。