アンチエイリアス とは、エッジやオブジェクトで本来滑らかなラインがジャギー (ピクセルのギザギザが見える状態) になっているところを取り除く処理です。このようなビジュアル アーティファクトを削除するために使用するアンチエイリアスに異なる方法があります。特定のレンダラやプラットフォームで使用できるように開発されたものもあれば、パフォーマンスと忠実度を改善するために優れたものもあります。


アンチエイリアスのメソッド
アンチエイリアスの多様な手法が開発されています。Unreal Engine では複数のメソッドを実装しており、プロジェクトのニーズと要件に応じて選択できます。デスクトップ/コンソール向けとモバイル プラットフォーム向けにアンチエイリアス メソッドから選択できます。
Unreal Engine では、プロジェクト用に次のアンチエイリアス メソッドが提供されています。
アンチエイリアス メソッド | デスクトップ/コンソール:ディファード レンダラ | デスクトップ/コンソール:フォワード レンダラ | モバイル:ディファード レンダラ | モバイル:フォワード レンダラ |
---|---|---|---|---|
テンポラル スーパー解像度 (TSR) | あり | あり | なし | なし |
テンポラル アンチエイリアシング アップサンプリング (TAAU) | あり | あり | あり | なし |
高速近似アンチエイリアシング (FXAA) | あり | あり | あり | なし |
マルチサンプル アンチエイリアス (MSAA) | なし | あり | なし | あり |
下の画像スライダを使用して、アンチエイリアスなしと利用可能なアンチエイリアス メソッドを切り替えて、それぞれの結果を比較できます。これらは静的なシーンを示す単一フレームのキャプチャです。アンチエイリアスの最もクリアな結果を確認するには、異なるタイプのアセットとマテリアルをシーンに配置し、自由に動かしてテストします。
画像シーケンス AA なし、TSR、TAA、FAA、MSAA





スライダを動かして、アンチエイリアスなし、TSR、TAA、FAA、MSAA (フォワード レンダラ) それぞれでのシーンを確認します。
アンチエイリアス スケーラビリティ設定
アンチエイリアス設定にはそれぞれ独自のスケーラビリティ グループが [Engine Scalability Settings (エンジンの拡張機能設定)] にあり、各手法のアンチエイリアス品質に関する直接の GPU 負荷をスケーリングできます。スケーラビリティ グループは各アンチエイリアス メソッドのコンソール変数をコントロールします。
アンチエイリアス のスケーラビリティ設定にアクセスするには、[Settings (設定)] ドロップダウン メニューの [Engine Scalability Settings] を使用できます。

品質をコントロールするのに、[Low (低)] から [Cinematic (シネマティック)] のオプションを選択する、またはエディタでシステムをテストし、最適なオプションを選択する場合は、[Auto (自動)] を使用できます。他に、特定機能 (アンチエイリアスやシャドウなど) の品質を調整できます。

[Engine Scalability Settings] の各エントリは「DefaultScalability.ini」ファイルにある設定可能なコンソール変数のセットに対応します。希望する品質設定に基づいてプロジェクトに最適になるようにこれらを編集できます。
コンソール変数のセットアップと設定の詳細については、「スケーラビリティ設定」を参照してください。これは高度なワークフローです。
アンチエイリアス メソッドを選択
[Project Settings (プロジェクト設定)] をメイン メニューの [Window (ウィンドウ)] から開きます[Project Settings] ウィンドウの [Engine (エンジン)] > [Rendering (レンダリング)] にアンチエイリアス設定があります。
デスクトップ / コンソール プラットフォームでは、アンチエイリアス設定は [Default Settings (デフォルト設定)] セクションにあります。

モバイル プラットフォームでは、アンチエイリアス設定は [Mobile (モバイル)] セクションにあります。

テンポラル スーパー解像度
テンポラル スーパー解像度 (TSR) とはプラットフォームに依存しないテンポラルのアップスケール処理です。このアルゴリズムでは、GPU フレーム負荷全体を削減するために、フレームの GPU サイクルをテンポラル アップスケールによる品質を改善するために主に使用します。非常に低い内部解像度をレンダリングすることで実現し、Unreal Engine 4 のテンポラル アンチエイリアシング アップサンプリングよりも低くなっています。
TSR はネイティブの高品質アップサンプリング手法を採用し、Nanite マイクロポリゴン ジオメトリで可能な詳細度と忠実度のレベルは次世代ゲームの要求を満たすものです。
次の比較画像は、ネイティブの 4K でレンダリングされたフレームと、1080p の解像度を 4K にアップスケールしたフレームをキャプチャして、品質とパフォーマンスの違いを示したものです。TSR により、GPU フレーム時間を半分近くに削減しながら、ネイティブ 4K 解像度に近い品質の画像を実現しています。


この比較画像では 4K 画像がページ幅に制限されています。圧縮されていない完全な解像度を確認するには、対象を右クリックして、コンピュータに保存し、新しいブラウザ ウィンドウで開きます。
テンポラル スーパー解像度には次の特性があります。
- 1080p という低い入力解像度でネイティブ 4K レンダリングの品質に近いフレームをレンダリングできます。
- 高周波の (詳細な) 背景に対する「ゴースト」アーティファクトが、Unreal Engine 4 のデフォルト テンポラル アンチエイリアシング メソッドで表示されていたものよりも少なくなります。
- 複雑度の高いジオメトリでのちらつきが減少しました。
- 各コンソール プラットフォームでの 動的解像度 スケーリングがサポートされます。
- D3D11、D3D12、Vulkan、Metal、PlayStation 5、Xbox Series S | X をサポートするあらゆるハードウェアで実行できます。
- シェーダーは、特に PlayStation 5 と Xbox Series S | X の GPU アーキテクチャに向けて最適化されています。
詳細については、「テンポラル スーパー解像度」を参照してください。
テンポラル アンチエイリアシング アップサンプリング
テンポラル アンチエイリアシング アップサンプリング (TAAU) とは、各フレーム内の異なる場所からサンプリングし、過去のフレームを使用して、サンプルをブレンドすることで、エッジからジャギーな部分を取り除き滑らかにします。


TAAU の品質はコンソール変数 r.TemporalAA.Quality
を使用してコントロールされます。次の値から選択できます。
- 0: 入力フィルタリングを無効にする。
- 1: 入力フィルタリングを有効にする。
- 2: 可動性ベースのアンチゴースト処理ありで入力フィルタリングを有効にする (デフォルト)
[Engine Scalability Settings] を使用して、アンチエイリアスの品質を変更できます。
レンダリング チェーンで、TAAU はデフォルトでは、スクリーン比率とともにテンポラル アップスケーラー設定を使用します。

テンポラル アップサンプリングを無効にする
Unreal Engine 4 から Unreal Engine 5 にプロジェクトを移行するプロセスを簡単にするために、プライマリ スクリーン比率に対して空間アップスケーラーをテンポラル アップサンプリングで使用するのを無効化できます。
これを実行するには、UE5 のプロジェクト設定で、[Engine (エンジン)] > [Rendering (レンダリング)] > [Default Settings (デフォルト設定)] に移動し、[Temporal Upsampling (テンポラル アップサンプリング)] 設定を無効にします。

この設定を無効にすると、テンポラル アンチエイリアシングのレンダリング チェーンは次のようになります。

スクリーン比率に対する TAAU 固有のシェーダーの置換
TAAU には次のとおり、プライマリ スクリーン比率の範囲に対する独自のシェーダーの置換があります。
- 50 ~ 70 は、小さい LDS タイルをメモリで使用するため、高速にレンダリングします。
- 71 ~ 100 は、デスクトップやベース コンソールで「普通の」DPI レンダリングに便利です。
プライマリ スクリーン比率 を レベル エディタの [Viewport Options (ビューポートオプション)] ドロップダウン メニューで設定できます。

高速近似アンチエイリアシング
高速近似アンチエイリアシング (FXAA) とは、空間専用アンチエイリアス手法です。ピクセル エッジ間をブレンド (ディザ) することにより、エッジを見つけ、滑らかにするため、高いコントラストのフィルタを使用する、ポストプロセス エフェクトです。この手法の名前が示すとおり、レンダリングが高速で、ローエンド デバイスやデスクトップに最適です。この手法の名前が示すとおり、レンダリングが高速で、ローエンド デバイスやデスクトップに最適です。
この手法はレンダリングが高速ですが、最終イメージでは、他のアンチエイリアス手法と比較したときに忠実度が下がる可能性があります。


FXAA のディザ品質は、コンソール変数 r.FXAA.Quality
を使用してコントロールされます。ジャギーがあるエッジを取り除くためディザで使用するサンプリング数を設定できます。サンプル数を増やすと、忠実度が高くなりますが、GPU 負荷が増加します。
次のオプションから選択します。
- 0: コンソール
- 1: PC 中間ディザリング (3 サンプル使用)
- 2: PC 中間ディザリング (5 サンプル使用)
- 3: PC 中間ディザリング (8 サンプル使用)
- 4: PC 低ディザリング (12 サンプル使用、デフォルト設定)
- 5: PC 高ディザリング (12 サンプル使用)
[Engine Scalability Settings] を使用して、アンチエイリアスの品質も変更できます。
空間とテンポラル アップサンプリング チェーンで、空間アップスケーラーは、プライマリ スクリーン比率のポストプロセス チェーンの最後で処理されます。

マルチサンプル アンチエイリアス
このアンチエイリアス手法は、フォワード レンダラ を使用するときに、モバイルとデスクトップ / コンソールでのみ使用できます。
マルチサンプル アンチエイリアス (MSAA) はフレームの一部を滑らかにするだけの手法です。MSAA では、問題の起きやすい領域 (ジオメトリのエッジなど) に注目します。エイリアシング問題がエッジで発生する可能性がある場合、MSAA はエッジを構成する 2 個のピクセルの色の間で色を調整します。ディザリング エフェクトでは、エッジが滑らかになる錯覚を生み出します。


MSAA は、エイリアシングを実行する対象エッジに沿って色をブレンドするため、そこで使用するサンプル数で品質が決まります。サンプル数を増やすと、ビジュアル品質がよくなりますが、GPU 処理の負荷が増加します。
MSAA で使用するサンプル数を [Project Settings] で設定できます。[Engine] > [Rendering] > [Default Settings] で [MSAA Sample Count] を指定します。この設定はデスクトップ / コンソールとモバイル向けのサンプル カウントをコントロールします。別の方法として、コンソール変数 r.MSAA.Quality
を使用して、品質を設定できます。

2、4、8 個のサンプル数を選択できます。




スライダをドラッグして、マルチサンプル アンチエイリアスが使用するサンプル数を増やして確認できます。
他のアンチエイリアス手法と異なり、MSAA は [Engine Scalability Settings] でコントロール できません。プロジェクト設定またはコンソール変数で設定する必要があります。
レンダリング チェーンで、MSAA は空間アップスケーラーの前に、エッジに沿ってジオメトリ エイリアシングを主に解決します。マテリアル、テクスチャ、透明性があるサーフェスに対するエイリアシングは、MSAA による影響を受けません。

テンポラル アップスケーラー
テンポラル アップスケーラー は、現在のフレームと前のフレームのデータを使用して、高品質のアップスケーリング結果を生成します。テンポラル アップスケーラーは、Unreal Engine 4 のテンポラル アンチエイリアシング アップスケーリング (TAAU)、Unreal Engine 5 の テンポラル スーパー解像度、NVIDIA の DLSS 2+ Super Resolution や AMD の FSR 2.0+, and Intel's XeSS などのサードパーティ製プラグインに関係なく、Unreal Engine ですべて同じ動作をします。
詳細については、「テンポラル アップスケーラー」を参照してください。