画像提供:Vaulted Sky Games

ホラーかくれんぼ:Epic Online Services を活用して Midnight Ghost Hunt の優れたマルチプレイヤー体験を構築

2022年10月31日
「生者」か「死者」か?あなたはどちらのチームを選びますか?Midnight Ghost Hunt では、この選択がゲームの鍵を握ります。どちらの側にも強みと弱みがありますが、この選択は慎重に行った方がよいでしょう。なぜなら、時計が午前 0 時を告げた途端、立場が逆転してしまうからです。

「異色のかくれんぼゲーム」として考案された、Midnight Ghost Hunt では、不気味なゴーストと恐れ知らずのゴーストハンターのチームが、廃墟となった劇場から呪われた海賊船まで、あらゆる場所で対決します。ゴーストは特殊能力と物体に憑依する力を持ち、ゴーストハンターは追跡ツールとスペクトル キャノンを駆使します。最初はゴーストハンターが有利ですが、午前 0 時を迎えた途端ゴーストが危険なアビリティを発揮し、ゴーストハンターに逆襲します。
画像提供:Vaulted Sky Games
このダイナミックな攻守交代は斬新であるだけでなく、早期アクセスをこぞってダウンロードした世界中のプレイヤーから好評を博しています。これは、本作の面白さだけでなく、インディーズ デベロッパーが Epic Online Services の無料ツールを 4 対 4 のマルチプレイヤーで自由に使用することでどのようなゲームが制作できるかについても証明しています。

この優れたタイトル全般について、Vaulted Sky Games のゲーム ディレクターである Sam Malone 氏にインタビューを行い、開発のあらゆるプロセスをどのように進めていったのか、また、その過程からどのような教訓やインサイトを得たのかについて伺いました。

Vaulted Sky Games スタジオの概要について教えてください。どのような経緯でスタジオを設立されたのでしょうか?

Vaulted Sky Games は、私とコミュニティ チーム、そして数人のフリーランサーで構成されるとても小さなスタジオです。2019年に、Coffee Stain Publishing と提携し、その後、スウェーデンのデベロッパー Ernst & Borg StudioShe Was Such A Good Horse をはじめとする、さまざまなスタジオとともに Midnight Ghost Hunt を開発しました。

私はビジュアル エフェクト業界からキャリアをスタートしました。ハリウッドで何年か働いた後、ゲームとインタラクティブ メディアにさらに力を入れることにしました。プログラミングの知識は豊富とはいえませんが、コミュニティ カレッジで Unreal Development Kit / Unreal Engine 3 のクラスを受講したことがあります。

Midnight Ghost Hunt のアイデアを思いついたとき、数か月間、仕事が終わった後の空き時間を使ってプロトタイプを作成しました。ブループリント スクリプティング の使用方法は、YouTube やさまざまなフォーラム サイトで学びました。以前は CG のライティングやレンダリングを多く手がけていたので、興味深い環境や優れたライティングを見る目を生かして、ゲームに合うビジュアルを探し求めていました。正直に言うと、ブループリントがなかったら、おそらく私はゲーム制作に挑戦することはなかったと思います。C++ や「従来の」プログラミング言語は、元々アーティストであった私がマスターするには容易ではなかったからです。
画像提供:Vaulted Sky Games
プロトタイプを完成させた後、パブリッシング パートナーを探し始めました。とても重要なことなのですが、この時期に Epic MegaGrants の前身である Unreal Dev Grant にも応募していました。数か月後に Unreal Dev Grant から助成金を獲得することができたのです。これは、絶好のタイミングでした。というのも、ちょうどその頃、仕事を辞めて Midnight Ghost Hunt にフルタイムで取り組んでいたからです。おかげで、資金調達に奔走する必要がなくなり、少し余裕ができて、ちょうどよいパブリッシャーを見つけることができました。Epic には本当に感謝しています!

このゲームのインスピレーションとなったものについて教えてください。

大学時代、私はいろんなゲームをプレイしましたが中でもプロップ ハントの mod にかなりはまりました。巻き込まれるばかばかしいシチュエーションがとても面白いと感じたのです。ビジュアル エフェクトのキャリアの終わりには、プロップ ハント (小道具かくれんぼ) の基本コンセプトをもう少し発展させて、説得力のあるテーマとコンテキスト (ゴーストハントなど) で、よりアクション性の高いゲームプレイを試してみたくなりました。
画像提供:Vaulted Sky Games
プレイヤーが家具に隠れるゲームには、ゴーストハンティングのテーマが最も適していました。ですが、従来のホラー ゲームのようなスタイルにはしたくありませんでした。「ばかばかしさ」と「ちょっと怖い感じ」のバランスがとれたゲームにしたいと思いました。真剣にプレイしているはずだったのに、実は、誘蛾灯を追いかけ回しているだけだったというようなプレイに面白味を感じたのです。

説得力のあるテーマだけでなく、定番のプロップ ハントにさらに変化を加えて、さらに充実させたいと思いました。そこで、プロップ (小道具) がただ逃げ回るだけでなく、反撃できるようにしたらどうだろう。プロップに特殊能力を持たせ、ハンターには豊富な武器やガジェットを装備させては?時間切れでゲーム終了ではなく、サドンデス モードになるようにしたら?などと考えました。
 
画像提供:Vaulted Sky Games

こういったコンセプトに沿って、自分だけでプロトタイプの作成に着手し、私の目指すゲームを理解してくれる強力なパブリッシング パートナーを探そうとしました。大まかなプレイアブル デモができた段階で、VFX の仕事を辞めて、Coffee Stain Publishing と提携しました。Coffee Stain Publishing は、適切な雰囲気とメカニクスに関して改善できるよう私をサポートしてくれました。Coffee Stain Publishing のサポートがなければ、本作は実現できなかったでしょう。

おかげで、本作の実現につなげることができました。対戦 PvP ゲームには賛否両論がありますが、これまでのところ「とても気に入った」という前向きなレビュー スコアをいただいていることをとても嬉しく思っています。2019年に Unreal E3 アワードを受賞したことも、望外の喜びでした!
Midnight Ghost Hunt ならではの魅力とはどのようなものだとお考えですか?

アクションとかくれんぼの融合は、プレイヤーにとってとても魅力的であるだけでなく、チームワークが重視されます。プレイヤーは、さまざまなアビリティやガジェットを使用するチームメイトとコンボを組んで戦うことが推奨されます。
 
画像提供:Vaulted Sky Games

たとえば、2 人のゴースト プレイヤーがポルターガイスト アビリティ (物体を浮かせて近くのハンターに投げつける) とコラプション アビリティ (物体に触れると爆発する) を組み合わせると、浮遊する爆発トラップを作ることができます。

一方、ハンターはレーダー (ゴーストの位置を追跡するツール) とスペクトロフォン (ゴーストの方向を追跡するツール) を組み合わせることで、ゴーストの位置を「三角測量」で突き止めることができます。
画像提供:Vaulted Sky Games
現在は開発はどの段階にあるのでしょうか?また、コミュニティからはどのようなフィードバックがあがっているのでしょうか?

現時点ではまだ早期アクセスの段階です。完成製品までには、引き続き多くの作業が必要です。早期アクセスの公開以来、2 つのメジャー アップデートといくつかの小さなコンテンツ パッチを実施しました。2 つの新しいマップ、チャレンジ システム、多数のスキンやエモートの他、マッチメイクやチート対策などの機能改善を追加しました。

コミュニティからは、とても高い評価を得ています。コミュニティのフィードバックが、本作の面白い部分や、どのような点にもう少し工夫が必要かを突き止めるうえでとても役立っています。フィードバックを慎重に精査し、主要な問題点に対処するよう取り組んでいます。コミュニティから要望の多かったホストの移行や専用サーバーのサポートなどの機能については、まもなくシッピングする段階まで到達しています。これらの機能を搭載して早期アクセスをローンチしたかったのですが、予想以上に複雑な機能になりました。ですが、これこそがゲーム開発といえるでしょう。

また、素晴らしい公式の Discord コミュニティもあります。このコミュニティでは、コミュニティ マネージャーがプレイヤーと交流して、フィードバックを収集し、バグや問題を分類することができます。開発中、Reddit でゲームプレイのさまざまな GIF を投稿したところ、GIF がそれぞれ数百万回再生され、大きな反響を呼びました。そのおかげで、少なくとも視覚的に説得力のあるものができたと確信することができました。

開発プロセスに関してですが、ゲーム開発に Unreal Engine を使用するのは初めてでしたか?使用した感想をお聞かせください。

開発プロセスに使用したのは初めてです。ですが、ビジュアル エフェクトでは UE を使用したことがあります。なぜなら、UE では、高品質のレンダリングを迅速に行い、Nuke、Fusion などのコンポジット ソフトウェアにパスをエクスポートできるからです。フレームのレンダリングを何時間も待つ必要がないのは、本当に助かるなと思ったことを覚えています。また、マテリアル エディタやライティング システムが、すぐに使用できて強力だったことも印象に残りました。

ブループリント スクリプティングがなければ、Midnight Ghost Hunt は完成しなかったといっても過言ではありません。元々 3D アーティストであった私にとって、特定のコーディング構文を学習する必要なく、ゲームプレイのメカニクスのプロトタイプを迅速に作成できる機能は、最も革新的でした。
画像提供:Vaulted Sky Games
プロジェクトが進むにつれて、いくつかの要素を C++ にリファクタリングしましたが、最終的には、ゲームのコア ロジックのほとんどをブループリントでビルドしました。従来のプログラミングの知識がなくても、ロジックを作成できる非常に強力なツールです。

ゲームプレイに影響するような何か斬新な機能は作成されましたか?

1 つは、ゴーストが「声掛け」することができる機能ですね。この機能では、位置と空間情報を持つ Epic Online Services のボイス データを使って敵チームに話しかけることができます。このボイス データは、すべての環境エコーやリバーブで処理されており、不気味な雰囲気を醸し出します。敵のハンターに憑依したり、惑わせたりすることもできるので、ロビーで複数のプレイヤーを集めて使ってみると、かなり面白い展開が見られます。

Epic Online Services についてですが、このプロジェクトで EOS の使用を検討したきっかけを教えてください。

EOS に興味を持った理由はいくつかありますが、一番興味があったのは、EOS の機能とクロスプレイを実現できる可能性です。

理想としては、複数のプラットフォームで利用できるマルチプレイヤー バックエンド サービスを探していました。こういったサービスでは、複数のプラットフォームでシッピングすることになった場合にすべてを作り直す必要がありません。このサービスを使用することで、クロスプレイを活用しながら、プレイヤー ベースを分断しないようにすることができます。現時点では、本作は 1 つのプラットフォームのみに対応していますが、プロジェクトの将来性を考えると、この方法の採用は合理的だといえます。

もう 1 つの重要な機能は、ボイス チャット システムです。本作はチーム主導のゲームであり、対戦型シューターでもあるため、各チームが堅牢なインゲームのボイスチャットを利用できることが非常に重要でした。EOS ボイス チャット を導入したところ、特にこれまで私たちが使用してきた他のプラットフォームと比べて、高い音声品質と柔軟性に驚かされました。また、早期アクセスでも EOS のボイス チャットの優れた品質と性能は盤石でした。セッションごとに 3 つのオーディオ チャンネルにアクセスでき、プレイヤーが敵チームの気をそらしたり、憑依するときの「声掛け」に役立つ、位置と空間情報を持つオーディオ チャンネルがあることがとても気に入っています。ボイス チャットは本作に大きく貢献しています。

また、Midnight Ghost Hunt は対戦型 PvP ゲームであるため、チート対策機能も重要でした。Easy Anti-Cheat を無料で利用できたことは、本作に非常に役立ちました。また、この機能を完全に実装すると、チートが大幅に減少するだけでなく、全般的にチートの検出がはるかに容易になります。

他の EOS ツールも使用しましたか?

ロビー、セッション、チート対策、ボイス、プレイヤー モデレーション/レポートなど、現在多くのツールを使用しています。

EOS の最も優れた点は、基本的にバックエンドのニーズのほとんどをワンストップで提供してくれることです。マルチプレイヤー ゲームを動作させるために必要な機能を得るために、多くの異なるサービスを実装、維持する必要がないのです。しかも無料です。これはインディーズ デベロッパーにとって非常に大きなメリットです。なぜならこういった機能の多くは、設立したばかりの小さなスタジオには手が出せないほど高額で、マルチプレイヤー ゲームの制作への挑戦を躊躇させてしまう可能性があるからです。また、最初から最後まで、実装はとても簡単です。

実際、EOS のロビー システムを使用すると、すぐにセッションをロードする必要なく、メイン メニューでプレイヤーを集めることができます。そのため、マッチのためのキューイングからフルマッチでのプレイへのスムーズな移行を容易に行うことができるようになりました。

また、P2P/NAT 機能を利用することで、プレイヤーが手動でポート転送を行う必要がありません。これらのセッションはサーバー ブラウザに列挙されるので、マッチメーカーを使用しない場合は、この方法で簡単にゲームに参加することができます。
 
また、プレイヤー モデレーション/処罰システムを活用して、有害なプレイヤーのレポートやバンを処理することができます。このように統一されたシステムを使用することで、私たち自身の Web サイトでレポートを処理しようと試みるよりもはるかに簡単に対処できます。

最後に、公式の EOS Online Subsystem プラグイン に切り替えたことで、各種マルチプレイヤー アルファ テストで発生したバグを解決できました。実際に、以前のバックエンドの汎用オンライン サブシステム呼び出しの多くを使用することができ、実装プロセス全体が簡素化され、スピードアップしました。これで、負担が大きく緩和されました。

Midnight Ghost Hunt の今後の予定を教えてください。

1.0 のフル リリースに向けて、コンテンツやリプレイアビリティの向上に力を入れています。また、さまざまなゲーム モードを試して、本作のバラエティに富んだ新しいプレイ方法を模索しています。
画像提供:Vaulted Sky Games
ハロウィン イベントでは、若干スロー ペースで、さらにダークで不気味なビジュアルに彩られた「ダークネス」という新しいゲーム モードが追加されます。ダークネス モードでは、午前 0 時のサドンデス フェーズの開始までの時間が延長されます。さらに、ゴーストハンターの弾薬が制限され、移動速度も低下します。このモードでは、アクション満載のアーケード ゲームのような現在のメイン ゲーム モードとは異なり、少し腰を据えてゲームプレイを楽しむことができます。

また、新しい実験段階のモードをコミュニティで試して、最も適切に機能するモードや、さらに探求する必要のあるモードを確認したいと考えています。通常、私たちは将来に向けた取り組みを続けており、重要な新コンテンツのための壮大な計画を持っています。今後の詳細発表にご期待ください!

Midnight Ghost Hunt をプレイするには、Steam をご確認ください。

    始める準備はできましたか?

    Epic Online Services により、デベロッパーは、すべてのフレンドをつなげるサービスの汎用セットを使用して、自分のゲームを各プラットフォームやストアに向けて拡大できます。

    Epic Online Services の詳細を確認して、SDK をダウンロードしてください。