Substrate は、Unreal Engine 5 のマテリアル オーサリング手法です。デフォルト ライティングやクリア コートなどの決まった組み合わせのシェーディング モデルやブレンド モードに代わって、より表現力に優れたモジュール式のフレームワークを提供します。
Substrate ではない (つまり従来の) マテリアル システムの特定の抽象化は Substrate によって廃止され、物質の測定されたプロパティで置き換えられています。そうすることで、より幅広い動作範囲のパラメータ空間が生み出され、金属、ガラス、プラスチックなどの個別のサーフェス タイプの間でより正確にブレンドできるようになっています。また、Substrate ではマテリアルのレイヤー化のプロセスが効率化されるため、金属上の液体やサブサーフェス散乱でのクリア コートのようなサーフェスを表現するのが容易になります。
Substrate におけるマテリアルは「物質のスラブ」として概念化されています。これらのスラブは Principled BSDF (双方向散乱分布関数) 表現であり、明確に定義された単位による物理量でパラメータ化されます。マテリアルは (ミキシングやレイヤー化などの) 操作対象にあるスラブのグラフとして表現されます。原則に基づいた表現であるため、Substrate マテリアルは、ビジュアル品質と引き換えにパフォーマンスが向上するようにプラットフォームの能力に応じて単純化することができます。
Substrate を有効にする
プロジェクトで Substrate マテリアル を有効にするには、以下の手順に従います。

- [Project Settings (プロジェクト設定)] を開いて [Engine (エンジン)] > [Rendering (レンダリング)] の順に移動します。
- [Substrate] セクションで、[Substrate materials (Experimental) (Substrate マテリアル (実験的機能))] を有効にします。
-
プロンプトとメッセージに従ってプロジェクトを [Restart (再起動)] します。
Windows では DirectX 12 (DX12) を使用することをお勧めします。Substrate は DirextX 11 (DX11) でも機能しますが、いくつかの問題があるため、さらにテストする必要があります。詳細については、このページの「制限事項および既知の問題」セクションを参照してください。
任意選択のプロジェクト設定とコンソール変数
Substrate には以下の任意選択のプロジェクト設定とコンソール変数があります。

プロパティ | 説明 |
---|---|
Project Settings | |
Substrate opaque material rough reflection (Substrateの不透明型マテリアルの粗い反射) | オンであれば、他のマテリアルをコーティングする粗いサーフェスで、物理的に妥当な方法で下層のレイヤーをぼかすことができます。 |
Substrate advanced visualization shaders (Substrate 詳細ビジュアライゼーションシェーダー) | このオプションをオンにすると、詳細デバッグ表示モードに必要とされるシェーダーが生成されます。それらのシェーダーによってパフォーマンスが低下する可能性があるため、Substrate マテリアルのトポロジをデバッグする必要がある場合にのみオンにします。詳細については、「Substrate のデバッグ表示モード」を参照してください。 |
コンソール変数 | |
`r.Substrate.BytesPerPixel | Substrate マテリアルが自動的に単純化される前のピクセルあたりのストレージ バイト数を指定する方法を提供します。この変数は、デフォルトではピクセルあたり 80 バイトに設定されています。より大きいストレージ要件がある複雑なマテリアルでは、この値を増やすことができます。この値を大きくするほど使用されるメモリ量が増え、メモリ帯域幅や他のパフォーマンス特性に影響を及ぼす可能性があります。この変数とパフォーマンスの関係は、そのコンテンツとプラットフォームの両方に大きく依存します。必要に応じて、「platform.ini」コンフィギュレーション ファイルで、この値をプラットフォームごとに指定できます。 |
従来のマテリアルを変換する
Substrate マテリアルを Substrate ではないマテリアルに戻すことは できません。マテリアルを開いて保存すると、変換は永続的です。プロジェクトで Substrate を有効にする前に、プロジェクトのバックアップ コピーを保存することをお勧めします。
Substrate が有効になっているプロジェクトで、既存のマテリアルを編集用に開くと、既存のマテリアルは自動的に Substrate マテリアルに変換されます。マテリアルのロジックを Substrate Legacy Conversion マテリアル式に渡すことで、既存のマテリアルは Substrate 形式のシェーディング ネットワークに変換されます。
Substrate Legacy Conversion Material Expression は、従来のマテリアルを開くと常に自動的に作成されるため、ユーザーがこのノードを手動で作成したり、新規マテリアルで使用したりする必要はありません。
既存のプロジェクトで Substrate を有効にする際には以下のガイドラインに従ってください。
- Substrate が有効になっているプロジェクトで Substrate ではない既存のマテリアルを開くと、そのマテリアルが保存されるときに「従来の」Substrate マテリアルに自動的に変換されます。その変換は永続的であるため、Substrate ではないマテリアルに戻すことはできません。
- プロジェクトで Substrate が無効になっている場合、Substrate マテリアルは黒色でレンダリングされます。変換済みのマテリアルから作成された従来の Substrate マテリアルも同様です。従来の Substrate マテリアルを従来のマテリアルに手動でつなぎ直すことはできますが、そうしてもマテリアル グラフに存在する Substrate ノードは取り除かれません。
Substrate とマテリアル レイヤーの関係
Unreal Engine での従来の マテリアル レイヤー (グラフベース と カスタム レイヤー GUI の両方) はパラメータ ブレンディングの概念に基づいています。各レイヤーでは、ブレンドされて最終的なシェーディング モデルに与えられる、パラメータのパターン グラフが定義されています。
マテリアル レイヤー駆動型のパラメータを Substrate で定義されているシェーディング モデルに与えることを妨げるものは何もありません。ただし、親マテリアルで Material Attribute ノードの出力を使用して、このロジックを手動でセットアップする必要があります。この方法での制限事項は、マテリアル属性システムにはパラメータの固定リストがありますが、複数スラブの Substrate 設定を与えるのに十分な数のスロットがない可能性があるということです。これは、実際の意味とは無関係な任意の名前のピンの使用が必要になる場合もあります
このページで説明されているように、Substrate は パラメータ ブレンディング をネイティブに使用できますが、Material Layers インターフェースからその機能にアクセスする方法はありません。Substrate とマテリアル レイヤーの統合は、今後の開発で非常に関心のある分野です。
Substrate マテリアルを操作する
Substrate マテリアルは従来のマテリアルと同様の方法で作成されます。このセクションでは、ノード、ブレンド モード、作成できるマテリアルのタイプに関する詳細など、Substrate マテリアルを構成する主な要素について説明します。
Substrate の Material Root ノード
従来のマテリアルと同様に、Material Root ノードは、Substrate スラブおよび他の Substrate ノード (演算子ノードや構成要素ノードなど) の供給先です。

また、従来のマテリアルと同様に、Material Root ノードが選択されている状態で [Details (詳細)] パネルを使用して、ブレンド モード およびマテリアルの外観を定義する他のプロパティを設定します。

Substrate マテリアルのすべてのグラフは、Material Root ノードの Front Material 入力につながれている必要があります。この入力が Substrate のすべてのグラフの終点です。

Substrate のブレンド モード
Substrate では、ブレンド モード の独自のセットを使用して、マテリアルのカラーが背景とどのようにブレンドされるかが定義されます。従来のマテリアルのブレンド モードは、他のマテリアルとどのようにミックスおよびブレンドできるかに限定されているため、作成できるマテリアルのタイプが限定されています。Substrate では、まとめてブレンドしてあらゆるタイプのマテリアルを作成できる、ブレンド モードの幅広い選択肢が提供されています。このことは、半透明サーフェスの物理的に正しいシェーディングを実現する上で特に重要です。
Substrate には以下のブレンド モードがあります。

ブレンド モード | 説明 |
---|---|
Opaque (不透明) | 光が通過することも浸透することもないサーフェスを定義します。被覆率が 1 である不透明なサーフェス。これは従来の Opaque ブレンド モードと同じです。 |
Masked (マスク) | 可視性を 2 値 (オン/オフ) 方式で選択的に制御する必要があるマテリアルに使用されます。被覆率が 1 または 0 である不透明なサーフェス。これは従来の Masked ブレンド モードと同じです。 |
TranslucentGreyTransmittance | 色付きサーフェスと被覆率があるが、透過率がグレースケールに減っている半透明マテリアル。これは、変調パスへの被写界深度のポスト透過処理の追加レンダリングが抑止されるため、より高速です。ハードウェア色付き透過処理 (デュアル ソース カラー ブレンディングと呼ばれる) がサポートされていないプラットフォームでのフォールバック ブレンド モードです。これは従来の Translucent ブレンド モード と似ています。 |
Additive (加算) | マテリアルのカラーを背景のカラーに加算し、最終カラー = 変換元カラー + 変換先カラーになります。 |
ColoredTranslucencyOnly | マテリアルの透過率のみが使用されます。サーフェス相互作用が 0 に減っています。これは従来の Multiply ブレンド モードと同じです。 |
AlphaComposite (Premultiplied Alpha) (AlphaComposite (乗算済みアルファ)) | このブレンド モードでは、マテリアルのどの部分が加算的にブレンドされるか、およびどの部分が Opacity 入力を使用して半透明にブレンドされるかをより細かく制御できます。従来の Alpha Composite (Premultiplied Alpha) ブレンド モードと同様に機能します。 |
AlphaHoldout | このブレンド モードでは、オブジェクトを貫通する穴を開けてその背後にあるオブジェクトが見えるようにできるアルファが提供されます。従来の AlphaHoldout ブレンド モードと同様に機能します。 |
TranslucentColoredTransmittance | 色付きサーフェス、被覆率、および色付き透過率があるフル機能の半透明マテリアル。従来の ThinTranslucent シェーディング モデルと同様に、透過率成分を個別のバッファでレンダリングする必要があるため、ポスト被写界深度で個別の半透明処理を使用する場合にコストがより大きくなります。 |
Substrate では、半透明ブレンド モードが目的ごとに、より効果的に定義されているため、従来のマテリアルよりも簡単に半透明処理を操作できます。2 つの間で変わらないままなのは、どの半透明ブレンド モードでも ライティング モード を設定して、そのサーフェスに対してライティングがどのように算出されるかを定義する必要があることです。これは、半透明マテリアルの正しい外観を実現するために重要です。
ユーザーが作成する半透明マテリアルの大多数で使用されるのは Surface Translucency Volume または Surface Forward Shading です。
以下のライティング モードから選択できます。
ライティング モード | 説明 |
---|---|
Volumetric NonDirectional (非指向性のボリュメトリック) | 指向性は考慮せずに、ボリュームに対するライティングが計算されます。煙や埃のようなパーティクル エフェクトに使用します。これは最も低コストのピクセルごとのライティング方法ですが、マテリアルの法線は考慮されません。 |
Volumetric Directional (指向性のボリュメトリック) | 指向性を含めてボリュームに対するライティングが計算されるため、マテリアル法線は考慮されます。パーティクル接線空間はデフォルトでカメラの方を向いているため、Generate Spherical Particle を有効にすることで、接線空間がより使いやすくなります。 |
Volumetric PerVertex NonDirectional (非指向性の頂点ごとのボリュメトリック) | Volumetric NonDirectional と同じですが、ライティングは頂点でのみ評価されるため、ピクセル シェーダーのコストが大幅に小さくなります。ライティングは引き続きボリューム テクスチャから生じるため、範囲は制限されます。ディレクショナル ライトは距離が離れるとシャドウがなくなります。 |
Volumetric PerVertex Directional (指向性の頂点ごとのボリュメトリック) | Volumetric Directional と同じですが、ライティングは頂点のみで評価されるため、ピクセル シェーダーのコストが大幅に小さくなります。ライティングは引き続きボリューム テクスチャから生じるため、範囲は制限されます。ディレクショナル ライトは距離が離れるとシャドウがなくなります。 |
Surface Translucency Volume (サーフェス透過処理ボリューム) | サーフェスに対してライティングが計算されます。ライトはボリュームに累積されるため、その結果はぼやけるようになり、距離は制限されますが、ピクセルあたりのコストが非常に小さくなります。ガラスや水のような半透明サーフェスに使用します。サポートされているのはディフューズ ライティングのみです。 |
Surface ForwardShading | サーフェスに対してライティングが計算されます。ガラスや水のような半透明サーフェスに使用します。これはフォワード シェーディングで実装されるため、ローカル ライトからのスペキュラ ハイライトはサポートされますが、ディファードのみの機能の多くはサポートされません。それぞれのライトの影響がピクセルごとに計算されるため、最もコストが大きい透過処理ライティング方法です。 |
Substrate マテリアルでの透過処理のセットアップと使用の例については、このページの「透過処理」セクションを参照してください。
Substrate スラブ
Substrate スラブ は Substrate マテリアルを組み立てる際の基本構成要素であり、マテリアルの外観の大部分を実現できる必要最小限のパラメータのセットになるように設計されています。そのため、より表現力の高い外観作成の基礎になっています。
スラブは、1 つの インターフェース と 1 つの 媒質 から成る物質のスラブの、原則に基づいた表現です。

Substrate Slab の組成:インターフェース (1) と媒質 (2)。
- インターフェース は、光がマテリアルのサーフェスと相互作用する境界です。インターフェースのプロパティは主に、そのインターフェースに与えられる Roughness、Normal、Diffused Albedo、F0、F90 の値で定義されます。
- 媒質 はインターフェースの下にある物質のボリュームであり、そこで光が散乱、伝達、吸収されます。媒質のプロパティは主に、Mean Free Path (MFP) 入力によって定義されます。
Substrate スラブは、Substrate ではないマテリアルでのモノリシックな Material Root ノードのモジュラー式代替物です。複数のサーフェス属性 (Diffuse、Specular、Roughness、Emissive、Cloth、Anisotropy など) から成っています。すべての Substrate BSDF ノード には、生成するマテリアルのタイプの名前付き出力 (Eye、Hair、Simple Clear Coat など) に関わりがあるプロパティが入っています。
従来のマテリアルではブレンド モードを利用して、使用できる入力を提示していました。Substrate では、そのさまざまな BSDF スラブを使用してマテリアルのタイプが定義されています。また、それらはブレンド モードに直接結び付けられなくなったため、それらをレイヤー化およびミキシングしてさまざまなマテリアル タイプを生成できます。
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従来の Material Root ノード | Substrate スラブと Material Root ノード |
使用される主な Substrate Slab BSDF ノードには以下の入力があります。
Substrate スラブの入力 | 定義 |
---|---|
Diffuse Albedo | サーフェスからディフューズとして反射される光の割合を定義します。これは媒質のローカル ベース カラーと似ています。デフォルト値は 0.18 です。 |
F0 | サーフェスがカメラと直交する場合の、スペキュラ ハイライトの色と明るさを定義します。誘電体マテリアル (プラスチックや他の非金属) では、通常この値は 0 ~ 0.08 の範囲です。メタリック マテリアルでは、この値は最大で 1 にすることができます。宝石では最大で 0.16 程度です。 |
F90 | サーフェス法線がカメラに対して 90 度である場合の、スペキュラ ハイライトの色を定義します。つまり、カメラ ビューを基準とするグレージング角での色です。明るさは 1.0 で固定されているため、色相と彩度だけが認識されます。F0 が 0.02 を下回ると、これは黒色にフェードします。 |
Roughness | マテリアルの粗さの度合いを制御します。サーフェスのラフネスは 0 ~ 1 の範囲です。0 (滑らか) であれば、ラフネスは鏡面反射であり、1 (完全に粗い) であれば、ラフネスは完全なマット、つまり乱反射です。異方性が使用されている場合、ラフネス値は接線軸に沿って使用されます。 |
Anisotropy | マテリアルの異方性の方向を制御します (-1:ハイライトは双接線に揃う、1:接線と一直線になる)。 |
Normal | サーフェス法線を入力として受け取ります。法線は、マテリアルのルート ノードでの空間プロパティに応じて接線またはワールド空間と見なされます。この入力によって、ピクセルごとのシェーディング法線が定義されます。 |
Tangent | サーフェス接線を入力として受け取ります。法線は、マテリアルのルート ノードでの空間プロパティに応じて接線またはワールド空間と見なされます。この入力によって、ピクセルごとのシェーディング接線が定義されます。 |
SSS MFP | サブサーフェス散乱の平均自由行程 (MFP)。これはマテリアルの密度を制御し、マテリアルによる光の吸収と散乱に影響を及ぼします。もっと正確には、これは光子が物質のパーティクルと相互作用する平均距離を定義します。その距離はカラー チャンネルごとに制御されます。 |
SSS MFP Scale | サブサーフェス散乱の平均自由行程 (MFP)。これはマテリアルの密度を制御し、マテリアルによる光の吸収と散乱に影響を及ぼします。もっと正確には、これは光子が物質のパーティクルと相互作用する平均距離を定義します。その距離はカラー チャンネルごとに制御されます。 |
SSS Phase Anisotropy | 正の値であれば、光の方向に沿ってフェーズ関数が引き伸ばされて、前方散乱になります。負の値であれば、光の方向の逆向きにフェーズ関数が引き伸ばされて、後方散乱になります。 |
Emissive Color | マテリアル サーフェスの上部のエミッシブ カラーを制御します。 |
Second Roughness | セカンダリ スペキュラ ローブのラフネスを制御します。0 (滑らか) であれば、ラフネスは鏡面反射であり、1 (完全に粗い) であれば、ラフネスは完全なマット、つまり乱反射です。 |
Second Roughness Weight | プライマリとセカンダリのスペキュラ ローブの間のミックス係数。Roughness を使用するプライマリ スペキュラのウェイトは (1 - SecondRoughnessWeight) です。この値が 0 であれば、プライマリ ローブのみがレンダリングされ、0.5 であれば、両方のラフネスの 50% ミックスがレンダリングされ、1.0 であれば、セカンダリ ローブのみがレンダリングされます。 |
Fuzz Roughness | ファズ レイヤーの粗さの度合いを制御します。ラフネスが 0 であれば滑らかな (光沢が強い) ファズであり、1 であれば完全に粗い (マット) ファズです。 |
Fuzz Amount | インターフェースでファズのようなレイヤーを付加して、色の再帰反射を引き起こします。この値によってサーフェス レイヤーの上に適用されるファズの量が制御されます。通常はファブリック マテリアルの作成に使用されます。 |
Fuzz Color | ファズ レイヤーの色を定義します。 |
Glint Density | マテリアルのサーフェスでのマイクロ ファセット密度の対数表現。 「ConsoleVariables.ini」コンフィギュレーション ファイルで |
Glint UVs | マテリアルのサーフェスでのグリントの位置とスケールを制御します。 「ConsoleVariables.ini」コンフィギュレーション ファイルで |
Substrate マテリアルのノード
Substrate マテリアルの作成には以下のタイプのノードを使用できます。
ノードのタイプ | 説明 |
---|---|
BSDF | これらのノードは、単純なマテリアルから髪や目や水のような複雑なマテリアルまで、ほとんどのタイプのサーフェスを表します。 |
演算子 | これらのノードは、複数の Substrate スラブ BSDF をミックスおよびレイヤー化して、複雑で多様なサーフェスを作成します。 |
構成要素 | これらのノードは、コーティングされたレイヤーや Unreal Engine のデフォルトの従来のマテリアル シェーディング モデルの作成など、よく使われるマテリアル タイプを Substrate で使用できるように変換します。 |
エクストラ | これらのノードは、Substrate マテリアルのマテリアル ドメインを定義し、それぞれ従来のマテリアル ドメインの同じ名前のものとよく似ています。 |
ヘルパー | これらのノードは、Substrate スラブの透過率を平均自由行程にマッピングするなど、マテリアル内で何らかの変換を行うために使用されます。 |
Substrate BSDF ノード
Substrate BSDF (双方向散乱分布関数) ノードはほとんどのタイプのサーフェスを表すために使用され、作成されるマテリアルの見た目を制御し、それに応じてそのドメインとシェーディング モデルを自動的に設定します。これは、マテリアルのルート ノードの [Details] パネルからそれらの側面が手動で設定されないようにすることを目標としています。
Substrate には以下の BSDF があります。

スラブ BSDF は Substrate でオーサリングを行うためのプライマリ ノードであり、他のスラブとレイヤー化することができます。その他の BSDF ノードは特殊なユースケース用であり、他の BSDF と混在させずに単独で使用する必要があります。
Substrate BSDF ノード | 説明 |
---|---|
Substrate Slab BSDF | 複数の成分 (ディフューズ、スペキュラ、かすみの度合い、クロスの毛羽、異方性) を集約する、物質のスラブの原則に基づいた表現。不透明のサブサーフェス、半透明な散乱と半透明な透過率のサブサーフェス散乱などのエフェクトをレンダリングできます。 |
Substrate Eye BSDF | Substrate による目のマテリアルのレンダリング専用の BDFS。角膜と虹彩用の特定の入力があります。 |
Substrate Hair BSDF | Substrate による髪のマテリアルのレンダリング専用の BDFS。 |
Substrate Simple Clear Coat | クリア トップ コートがあるマテリアルをレンダリングするための単純で高速な方法を提供します。このノードは、バックグラウンドで Substrate スラブ BSDF を使用しますが、クリア コートのレンダリングのワークフローを単純化します。このノードは従来の Clear Coat マテリアルのレンダリングに最適化されています。 |
Substrate SingleLayerWater BSDF | 主に Water システムで使用される Single Layer Water マテリアルのレンダリング専用の BSDF。 |
Substrate Unlit BSDF | 色付きエミッシブ輝度がある非ライティング要素のレンダリングに使用される BSDF。この Substrate ノードは従来のグレースケール不透明度を色付き透過率で置き換えます。 |
Substrate Volumetric-Fog-Cloud BSDF | 関与媒質を表すために使用される BSDF。このノードは、ボリュメトリック フォグ および ボリュメトリッククラウド のレンダリングに使用されます。 |
Substrate 演算子ノード
Substrate 演算子 ノードは、複数の Substrate スラブ をミックスまたはレイヤー化して複雑で多様なサーフェスを作成します。Substrate スラブが物質の 1 つのピースを表している場合、演算子はそれらのピースを組み合わせる方法を提示します。
以下の Substrate 演算子から選択できます。

Substrate 演算子はすべての Substrate BSDF で使用できるわけではなく、これらの演算子ノードを使用できるのは、Substrate スラブ BSDF と Substrate Simple Clear Coat のみです。
Substrate 演算子ノード | 説明 |
---|---|
Substrate Coverage Weight | この演算子は、スラブからの入力を受け取り、使用される被覆率の量を制御します。Weight はカバレッジの量です。ウェイトを小さくすると、スラブの物質の被覆率が小さくなり、その下にある物質まで見えるようになります。このノードは Substrate Vertical Layer 演算子と併用して、不透明な物質を別の物質の上に乗せます。たとえば、埃や汚れのレイヤーでその下にあるサーフェスをどの程度覆うかを制御するといった操作があります。 |
Substrate Horizontal Blend | この演算子は、Background と Foreground の 2 つのスラブから入力を受け取ります。Mix 入力は、線形補間を使用してそれら 2 つのスラブをどの程度混在させるかを制御します。 |
Substrate Vertical Layer | この演算子は、Top レイヤーと Bottom レイヤーの 2 つのスラブから入力を受け取ります。Bottom スラブは Top スラブでコーティングされ、Bottom レイヤーの外観は Top レイヤーのプロパティの影響を受けています。Top Thickness 入力を使用して、Top レイヤーが Bottom レイヤーを覆う厚さを制御します。この演算子は、車の塗装、木材のニス、サーフェス上の水分を作り出すのに最適です。 |
Substrate Add | この演算子は、2 つのスラブから入力を受け取って、それらを加算します。作成されるマテリアルは物理的に妥当なものではありません。サーフェスに入ってくるエネルギーよりもサーフェスから出て行くエネルギーの方が大きくなるからです。 |
演算子ノードには、Use Parameter Blending がオンになっている場合に背景と前景をブレンドして 1 つのマテリアルにするためのオプションが含まれています。Substrate 演算子は、複数のスラブをミックスおよびレイヤー化することによって、マテリアルの複雑な外観を作り出すことができるため、ランタイム時のコスト (主にライティングの評価によるコスト) は、パフォーマンスに大きな影響を与える可能性があります。パラメータ ブレンディングは、コストが大きいライティングの評価と引き換えに、ランタイム パフォーマンスが向上し、ライティングの評価のコストが小さくなる最適化です。
このパラメータ ブレンディング最適化の詳細については、このページの「パラメータブレンディング」セクションを参照してください。
Substrate Coverage Weight
Substrate Coverage Weight 演算子は、垂直レイヤー化操作での 2 つのスラブの比率を制御します。Weight 入力は、(下記の例のように)Substrate Vertical Layer 演算子 と併用してレイヤー化する場合の、このマテリアルの被覆率を制御します。また、Translucent ブレンド モードで不透明度がどのように使用されるかと同様に、アルファを被覆率として、またはアルファを不透明度として使用する場合に、演算子を使用して半透明サーフェスを実現することもできます。

上記のグラフでは、Substrate Coverage Weight 演算子が使用されており、Bottom スラブに適用される被覆率が Weight 入力によって制御されています。Weight が 1 であれば完全に不透明であり、緑色のテクスチャ パターンが遮られます。0.5 であれば 50% 透明であり、2 つのマテリアルの色がミックスされたテクスチャ パターンが見えます。0 であれば完全に透明であり、緑色のテクスチャ パターンのみが見えます。

Weight 入力は Float3 値を取るため、テクスチャを使用して、マテリアルのレイヤー化時にスラブに適用される被覆率を制御することもできます。
Substrate Horizontal Layer
Substrate Horizontal Layer 演算子は、一つが背景を表し、もう一つが前景を表す 2 つのスラブをミックスさせます。Mix 入力は、線形補間によるミックス比率を制御します。

Mix 入力が 0 であれば、Background 入力が完全に見え、1 であれば、Foreground 入力が完全に見えます。Mix 比率が 0.5 であれば、2 つのスラブがミックスされ、ピクセルごとにミックスが評価されます。Mix 入力で、次の例のようにテクスチャを使用して、ミックス比率を制御することもできます。

Substrate Vertical Layer
Substrate Vertical Layer 演算子は、Top 入力と Bottom 入力でスラブを受け取って、それらを合わせてレイヤー化します。このノードは Top レイヤーの厚さを考慮して、物理的に正しい透過率と散乱を適用します。これは、Top レイヤーが Bottom レイヤーを覆うコーティング操作と似ています。Bottom スラブの外観は Top スラブのプロパティに依存します。Top 入力に渡される BSDF が完全に不透明であれば、Bottom スラブはまったく見えません。

垂直レイヤー化は、不透明の下位レイヤーの上に透明または半透明トップ コートを必要とする場合に特に便利です。そのような例として、車の塗装、木材のニス、サーフェス上の水分 (水たまりなど) があります。
Substrate Add
Substrate Add 演算子は、2 つのスラブを組み合わせてその結果を出力します。この演算子は、物理的に妥当なものとは見なされません。サーフェスに入ってくるエネルギーよりもサーフェスから出て行くエネルギーの方が大きいマテリアルが生成される可能性があるからです。これは、物理的に妥当であることよりもアート ディレクションの方が重要である場合に役立ちます。ただし、物理的に正確なサーフェスを維持するには、この演算子を使用しないことをお勧めします。

Substrate 構成要素ノード
Substrate 構成要素 ノードは、ある程度一般的なユースケース向けの変換を提供する、マテリアル関数 のセットです。これらはマテリアル関数であるため、直接開いて調べることができます。
以下の Substrate 構成要素から選択できます。

Substrate 構成要素ノード | 説明 |
---|---|
Substrate Coated Layer | 互いにレイヤー化されている 2 つのスラブから成る 1 つのコーティングされたマテリアルを作成するマテリアル関数です。コートのインターフェースと吸収を制御するための使いやすいパラメータが公開されています。 |
Substrate Standard Surface Opaque | 不透明なサーフェス用の使いやすいパラメータ化を備えた、万能シェーダーのような Substrate マテリアルを作成するマテリアル関数。パラメータ化では、業界標準の用語と概念が使用されています。 |
Substrate Standard Surface Translucent | 半透明なサーフェス用の使いやすいパラメータ化を備えた、万能シェーダーのような Substrate マテリアルを作成するマテリアル関数。パラメータ化では、業界標準の用語と概念が使用されています。 |
Substrate UE4 Default Shading | Substrate ではないマテリアルで使用されるディフューズ、メタリック、スペキュラをパラメータ化するために、Substrate でのデフォルトのシェーディング モデルをレプリケートするマテリアル関数。 |
Substrate UE5 Unlit Shading | UE4 の Unlit シェーディング モデルを Substrate で作り直すマテリアル関数。 |
Substrate エクストラ ノード
Substrate エクストラ ノードは、マテリアルのタイプとそれが提供する関数を指定します。たとえば、Substrate マテリアルがデカール関数またはライト関数として使用されるように設定します。これらのノードは、マテリアル ドメインの一部として割り当てられた、Substrate ではないマテリアルとよく似ています。
以下の Substrate エクストラから選択できます。

これらのノードはモノリシックであり、単独で使用する必要があります。Substrate 演算子 とは併用できません。
Substrate エクストラ ノード | 説明 |
---|---|
Substrate Convert To Decal | 任意のマテリアル グラフをデカールとして使用できます。このノードは、マテリアルが変換されてデカール マテリアルとしてのみ使用されるように指定します。 |
Substrate Light Function | このノードは、マテリアルが ライト関数 としてのみ使用されるように指定します。これは単独で使用する必要があります。 |
Substrate Post Process | このノードは、マテリアルが ポストプロセス マテリアル としてのみ使用されるように指定します。これは単独で使用する必要があります。 |
Substrate UI | このノードは、マテリアルがユーザー インターフェース要素としてのみ使用されるように指定します。たとえば、UMG UI Designer で使用できるように設計されているマテリアルに使用します。これは単独で使用する必要があります。 |
たとえば、Substrate Convert To Decal ノードを使用すると、任意の Substrate マテリアルをデカール マテリアルとして使用して、シーンにあるメッシュ デカールやデカール アクタに適用できます。
エクストラ ノードでは、マテリアルのルート ノードの Front Material 入力につながれるときに、マテリアル ドメイン が自動的に設定されます。一部のエクストラ ノードでは、出力がサポートされるように ブレンド モード を変更する必要があります。

Substrate Convert To Decal ノードを使用する場合、ブレンド モードを TranslucentGrey Transmittance、Colored Transmittance、TranslucentColorTransmittance、AlphaComposite (Premultiplied Alpha) のいずれかに設定する必要があります。設定しない場合、マテリアル エディタの [Stats (統計情報)] パネルにエラーが表示されます。
Substrate ヘルパー ノード
Substrate ヘルパー ノードは、何らかの変換を行うか、従来のマテリアルで行うことができた何かを実現するためのノードとマテリアル関数のセットです。

Substrate ヘルパー ノード | 説明 |
---|---|
Substrate Flip Flop | 視点入射光角に基づいてサーフェスの反射性を制御します。視野角に基づいて法線方向の色 (F0) をグレージング角での色 (F90) まで補間できるようにし、Falloff パラメータで補間速度を制御します。 |
Substrate Haziness-To-Secondary-Roughness | ベース サーフェスのラフネスとかすみの度合いから、セカンダリ スペキュラ ローブのラフネスを算出します。このパラメータ化によって、かすみの度合いが物理的に意味をなし、知覚的に作成しやすくなります。 |
Substrate IOR-To-F0 | 誘電体の IOR を F0 値に変換します。 |
Substrate Metalness-To-DiffuseColorF0 | メタルネスのパラメータ化 (BaseColor/Specular/Metallic) を DiffuseAlbedo/F0 のパラメータ化に変換します。 |
Substrate Rotation-To-Tangent | 回転角を接線ベクターに変換します。 |
Substrate Thin-Film | 生成されるマテリアルのスペキュラ パラメータ F0 と F90 を、入力サーフェスのプロパティおよび薄膜のパラメータに従って算出します。 |
Substrate Transmittance-To-MeanFreePath | サーフェスに直交して表示される関与媒質のスラブに相当する透過カラーを変換します。このノードは スラブ BSDF の入力に直接マッピングします。 |
Substrate View-Dependent-Coverage | 視点入射光角に基づいて被覆率を変化させます。このノードは、視点依存エフェクトを意味するのに十分大きい厚さがあるレイヤーをミックスすることに役立ちます。たとえば、入射光角と比べてグレージング角でより大きなオクルージョンがある大粒の埃に役立ちます。 |
Substrate ノードに関する追記
- Substrate デカール マテリアル
- Substrate デカールは現時点では従来のデカール ブレンド モード パスと同じ機能を使用しています。
- Substrate デカールの将来のバージョンでは、水、血、粘液などのための Layer Translucent スラブなど、すでに Substrate で利用可能な他の機能と同様の、より堅牢な機能セットを提供することを目指しています。たとえば、車の塗装の傷、地面の足跡、タイヤ痕のように厚さに応じて侵食できるレイヤーがあります。
- Legacy Conversion ノード
- プロジェクトで Substrate が有効になっている状態で Substrate ではない既存のマテリアルを開くと、Substrate を使用するようにそのマテリアルが自動的に変換されます。既存のすべての入力は Substrate Legacy Conversion ノードに与えられます。
新規の Substrate マテリアルを作成するときに、このノードを手動で作成したり使用したりしないでください。
Substrate の [Stats (統計)] パネル
Substrate の [Stats] パネルは、マテリアル エディタでマテリアル グラフの下にあります。

Substrate のパネルにはマテリアル、単純化、およびトポロジに関する統計が表示されます。

演算子でのパラメータ ブレンディング
ピクセルごとに複数の BSDF (双方向散乱分布関数) を使用すると、マテリアル グラフでの BSDF の数に比例してレンダリング プロセスの所要時間が長くなります。2 つの BSDF に対するライティングの評価にかかる時間は、1 つの BSDF の場合の 2 倍になります。このことは、不透明なサーフェスと半透明なサーフェスのどちらにも当てはまります。
演算子ノードには、グラフでのミキシングとレイヤー化のすべての操作の外観を維持しながらマテリアルのパフォーマンスとメモリ使用量の最適化を試行する Use Parameter Blending チェックボックスがあります。この設定を有効にする必要があるのは、マテリアルのルート ノードの前で一番右側にある演算子ノードだけです。グラフ内の他のすべてのノードにはパラメータ ブレンディングが自動的に適用されます。
1 つのマテリアルにある複数のスラブのパフォーマンスが懸念される場合、パラメータ ブレンディングは適切なフォールバック オプションです。有効になっていれば、2 つのスラブがマージされて、1 回のライティングの評価のみを必要とする単一のスラブになります。このマージにより、2 つの個別のスラブよりもメモリ使用量が大幅に減ります。

下記の例のマテリアルは、Use Parameter Blending が有効になっている場合となっていない場合の、Content Examples の Substrate レベル から抜粋したものです。
このマテリアル (M_Substrate_ShaderBall_IceRocks) は 2 つの BSDF を使用します。左側はブレンディングなしで、右側はパラメータ ブレンディングを使用しています。

これは、2 つの Vertical Layer 演算子と 1 つの Coverage Weight 演算子を使用して 4 つのスラブをブレンドする、より複雑なマテリアル (M_Substrate_ShaderBall_AnisoOverSSS) です。マテリアルのメモリ使用量はピクセルあたり 108 バイトです。Use Parameter Blending が有効になっていると、すべての演算子でのブレンディングによって、ピクセルあたり 28 バイトに減ります。左側のマテリアルはブレンディングなしで、右側はパラメータ ブレンディングを使用しています。

演算子ノードでのパラメータ ブレンディングではなく、以下のいずれかのワークフローを使用することでも同様の結果が得られます。
- グラフ内で DiffuseAlbedo、F0、F90、Roughness、および他の属性を手動でブレンドします。すべての属性を、Front Material 入力につながれている単一のスラブに渡します。この手法は単独の場合はうまく機能しますが、複雑なマテリアルの大規模なライブラリでは手に負えなくなる可能性があります。
- グラフベースの レイヤー化マテリアル のワークフローを使用します。この方法ではマテリアル関数を使用して作業を再利用するため、1 つ目の方法よりもうまくスケーリングできます。
モバイルなどのローエンド プラットフォームでは、パフォーマンスが向上するようにコンパイラが自動的にパラメータ ブレンディングを有効にします。中程度のプラットフォームでは、ターゲットのパフォーマンスとメモリ制約を超えないように、マテリアルの下部レイヤーでパラメータ ブレンディングが積極的に導入されています。
メタルネスとスペキュラ レスポンス
Substrate で使用されるパラメータ化は、Substrate ではない (従来の) マテリアルでの DefaultLit シェーディング モデルとは異なり、Metallic 入力はなくなっています。このパラメータ化では、抽象化された値 (メタリックやスペキュラなど) を使わずに、実世界の単位による物理的プロパティに移行しています。
Substrate マテリアルの反射プロパティとスペキュラ レスポンスは、DiffuseAlbedo、F0、F90 という 3 つの属性で定義されています。Substrate ではエネルギー保存が自動的に適用されるため、スペキュラのインターフェースと媒質ではエネルギーは付加されません。したがって、F0 が大きいほど、ディフューズの寄与が見えにくくなります。
メタルネスは Substrate Metalness-To-DiffuseAlbedo-F0 ヘルパー ノードを使用してエミュレートされています。BaseColor、Specular、および Metallic の値を入力として受け取って、Substrate スラブの Diffuse Albedo と F0 にマッピングする値にそれらを変換します。

EdgeColor 入力または F90 入力を使用して、ライティングへの複雑なマテリアルの幅広いディフューズとスペキュラ レスポンスを実現できます。たとえば、接線に直交するシアンから黄色へのスペキュラ反射がある赤色の球体を実現できます。

Substrate FlipFlop ヘルパー ノードは、法線ベースのスペキュラのカラー化を実現するのに役立ちます。このノードは、F0 と F90 のスペキュラ カラーを、調整可能なフォールオフ トランジションがある NoV の関数として制御します。
粗い屈折
Substrate では、半透明オブジェクト、および半透明の最上位レイヤーがあるレイヤー化不透明マテリアル上で、粗い屈折がサポートされています。シーン背景のぼやけや屈折したオブジェクトまでの距離は、歪み/屈折が使用される場合のプライマリ マテリアルのラフネスから算出されます。
半透明の粗い屈折
粗い屈折がある半透明マテリアルを作成するには、[Details] パネルで以下のプロパティを設定します。
- Blend Mode: TranslucentColoredTransmittance、TranslucentGreyTransmittance、ColoredTransmittanceOnly のいずれか。
- Refraction Method: Index of Refraction (IOR)、Pixel Normal Offset、2D Offset のいずれか。
Refraction、Roughness、および SSS MFP のそれぞれに値を渡します。下記のグラフでは、ラフネスが 0 より大きい場合に、シンプルなすりガラスの結果が生成されます。大きい SSS MFP の値は、完全に透明なマテリアルの作成に使用され、IOR が 1.514 であればガラスの IOR に近づきます。

下記の例では、Roughness の値が大きいほど (左から右に 0、0.2、0.6)、ガラスの背後にあるオブジェクトのぼやけが強くなっています。

粗い屈折によるぼやけでは、シーン内にある半透明な要素の背後の深度が考慮されるように近似値が使用されます。
不透明の粗い屈折
Substrate のコーティング レイヤーでは、その下にあるレイヤーを、トップ コーティング レイヤーのラフネスと厚さに基づいてぼかすことができます。このタイプの屈折はパフォーマンスへの影響が大きく、プロジェクトに対して、[Engine] > [Rendering] カテゴリの [Project Settings] で有効にする必要があります。Substrate opaque material rough refraction のチェックボックスをオンにすると、この機能が有効になります。

下記のグラフは、不透明なチェッカーボードの上にクリア コートがある垂直レイヤー化マテリアルを使用して、不透明マテリアルの粗い屈折を使用する例を示しています。

Roughness と Thickness のパラメータによって、下層のマテリアル レイヤーに適用されるぼやけの強度が決まります。いずれかの値を大きくするほど、屈折によるぼやけが強くなります。
下記の例でそれを確認できます。左側の例では、クリア コートの最上位レイヤーの Roughness と Thickness が 0.1 です。右側の例では、Roughness が 0.8、Thickness が 6 であるため、下層のレイヤーがぼやけています。

サブサーフェス散乱と関与媒質
Substrate スラブには関与媒質があり、それを使用してさまざまなボリュメトリックの外観をシミュレートできます。
たとえば、不透明なマテリアルのみをレンダリングする場合、マテリアル トポロジの下層にあるスラブではサブサーフェス散乱が考慮されます。ここで考慮が必要な点が 2 つあります。
- マテリアルの [Details] パネルで サブサーフェス プロファイル がスラブに割り当てられていれば、そのプロファイルがピクセルごとに使用されます。サブサーフェス プロファイルは ブレンド不可 であることに注意してください。
- サブサーフェス プロファイルが割り当てられていなければ、そのスラブの DiffuseAlbedo と SSS MPF プロパティによって散乱が決まります。これらのプロパティは ブレンド可能 です。
サブサーフェス散乱の MFP (平均自由行程) は、さまざまな波長の光がコリジョンに遭遇するまでに媒質を貫通する距離 (センチメートル単位) です。下記の例は、左から右に 0 から 1 までスケーリングされた DiffuseAlbedo (白で色付け) と SSS MFP (赤で色付け) を示しています。

不透明なマテリアルの下層ではないスラブか、透明のマテリアルで使用されているスラブは、ボリュメトリック表現で考慮されます。それも DiffuseAlbedo と SSS MFP 属性によって決まります。DiffuseAlbedo は、単一および複数の散乱を考慮した、媒質のベースカラーを表します。
SSS MFP 属性は、サーフェスに直交する視点に対する媒質の透過率を制御する手段であり、下にあるサーフェスがどの程度見えるかを表します。

透過カラーが左から右に黒色から青色の範囲で変化し、DiffuseAlbedo が下から上に黒色から白色の範囲で変化するマテリアルの例。
別のスラブの上にあるスラブの垂直レイヤー化は、コーティング操作と似ています。下層のスラブの可視性は上層のスラブの透過率に依存します。上層のスラブ (サーフェス上の水たまりのエッジなど) の被覆率を小さくして、徐々に消えていくようにすることができます。これは、アルファ ブレンディングと似ている Coverage Weight 演算子ノードを使用して実現できます。

Transmittance が左から右に黒色から青色の範囲で変化し、カバレッジが下から上に 0 から 1 の範囲で変化するマテリアルの例。
特定の透過カラーまたは散乱カラーを実現するには、Substrate Transmittance-To-MeanFreePath ヘルパー ノードを使用します。MFP は、サーフェスが法線に沿って垂直に見られている場合に、法線入射で一致するように TransmittanceColor に対して導出されます。
下記の例は、ピンク色の不透明なマテリアルの上での青色のサブサーフェス散乱を示しており、SSS MFP は Transmittance Color から導出されています。

MFP はカラーではなく、光の伝達の測定であるため、特定の透過カラーを実現しようとする場合に、MFP を直接制御することはお勧めしません。MFP とサブサーフェス散乱カラーの関係は、アーティストの観点からすると直感的ではなく線形でもありません。
透過処理とブレンド モード
Substrate では、Substrate ではない従来のマテリアルで可能なオプションよりも堅牢な半透明サーフェス シェーディング用のオプションが提供されています。サーフェスが物質 (Substrate スラブ) から成っていることを考慮する場合は、Substrateのブレンド モード のリストを利用する方が理にかなっています。
半透明マテリアルを作成するには以下の手順に従います。
- 透過処理がサポートされている以下のいずれかの ブレンド モード を選択します。
- Opaque
- Masked
- TranslucentColoredTransmittance
- TranslucentGreyTransmittance
- ColoredTransmittanceOnly
- AlphaHoldout
- マテリアルのルート ノードを選択した状態で、[Details] パネルで Lighting Mode を選択します。次の選択肢から選択します。
- Surface Forward Shading (サーフェス フォワード シェーディング)
- Surface Translucency Volume (サーフェス透過処理ボリューム) – このオプションではサーフェス上の反射がサポートされている。
- Volumetric NonDirectional (非指向性のボリュメトリック) – 使用コストは小さいが、光を反射しない。
半透明 Substrate マテリアルのセットアップの例を以下に示しています。Blend Mode は TranslucentColoredTransmittance に設定され、Lighting Mode は Surface ForwardShading に設定されています。マテリアルのルート ノードの Front Material ピンに渡される 1 つの スラブを使用して、不透明に見える半透明マテリアルを生成しています。

スラブと Front Material 入力の間で Substrate Coverage Weight 演算子を使用して、マテリアルの透過率を制御しています。Substrate Coverage Weight ノードの Weight 入力を使用して、マテリアルの透明度を制御しています。

0 ~ 1 の範囲の定数値を使用して、(上図のように) マテリアル全体の不透明度を制御するか、(下図のように) テクスチャを使用してマテリアルの部分的な不透明度を制御します。

さらに一歩進んで、関与媒質の MFP を指定することで、色付きガラスのような物質のスラブを作成することができます。下記は Transmittance-To-MeanFreePath ヘルパー ノードの使用例で、SSS MFP につながれているオレンジ色の TransmittanceColor を使用して、光を透過する領域だけマテリアルをオレンジ色に着色するようにセットアップしています。指定されている TransmittanceColor は「ターゲット」のカラーであり、指定されている Thickness 入力 (デフォルトは 0.01 センチメートル) に達しています。

Substrate の透過処理に関する追記
- 半透明マテリアルでは、スラブが関与媒質のボリュームと見なされる場合でも、スクリーン空間サブサーフェス散乱は サポートされていません。
Substrate のデバッグ表示モード
Substrate を使用する場合、そのマテリアルがどのように行われていて、どれに注目することにメリットがあるかを確認することは役立ちます。Substrate のデバッグ ビジュアライゼーション モードは、[Substrate] カテゴリ の [View Mode (表示モード)] ドロップダウン リスト内にあります。

Substrate には以下のデバッグ用ビジュアライゼーション モードがあります。
表内の画像をクリックすると拡大表示されます。
デバッグ ビジュアライゼーション | デバッグ ビジュアライゼーション名 | 説明 |
---|---|---|
Material Properties (マテリアルのプロパティ) | マウス カーソルの下にある Substrate のプロパティを視覚化します。調べたいピクセルの上にマウス カーソルを乗せると、ライティングに使用されるマテリアルのパックされた最終的なクロージャー (プロパティ、色付きウィジェット、マテリアルで有効になっている機能、使用バイト数など) が表示されます。 | |
Material Count (マテリアル数) | ピクセルあたりの Substrate マテリアルの数を視覚化し、使用されている BSDF スラブ ノードの数に応じて色付けします。 | |
マテリアルのバイト数 | ピクセルあたりの Substrate マテリアルの使用量を視覚化します。マテリアルは、使用しているバイト数で色分けされます。また、マウス カーソルをマテリアルに乗せると、そのマテリアルのピクセルあたりのバイト数が表示されます。 | |
Substrate Info (Substrate 情報) | このモードでは、プロジェクトでの Substrate の使用状況に関する情報の要約が表示されます。最大メモリ使用量、(単純化のしきい値を設定するのに役立つ) ピクセルあたりの最大バイト数、有効になっている Substrate 機能などに関する情報が含まれます。 | |
Substrate Advanced View Modes (Substrate 詳細表示モード) | ||
Advanced Material Properties (詳細マテリアルプロパティ) | 現在マウス カーソルの下にあるマテリアルを構成しているさまざまな Substrate スラブに関する情報が表示されます。スラブごとに個別に画面に提示されます。 この表示モードは、[Engine] > [Rendering] カテゴリにある [Project Settings] で [Substrate advanced visualization shaders (Substrate 詳細ビジュアライゼーションシェーダー)] チェックボックスをオンにして有効にする必要があります。 |
|
Material Classification (マテリアルの分類) | このモードでは、タイルごとのマテリアルの複雑さが示され、次のように色分けされた結果が返されます。
スラブ ノードを見て、それが Simple、Single、Complex のどれであるかを確認することで、Substrate マテリアルの複雑さに関するヒントが得られます。 |
|
Rough Refraction Classification (粗い屈折の分類) | このモードでは、Opaque Rough Refraction プロパティを使用するマテリアルが表示されます。また、このモードでは Substrate マテリアルでサブサーフェス散乱が有効か無効のどちらになっているかも区別されます。 これらのビジュアライゼーション モードのいくつかで示されるタイルは、後で最適化されたポストライティング パスの実行に使用されます。これらは、使用されるスラブの数と有効になっている機能の数を減らし、演算子でパラメータ ブレンディングを使用する ことによって、Substrate マテリアルを最適化するのに役立ちます。 ミックスおよびレイヤー化されているいくつかのマテリアルから成っているが、(動的マスキングのため、または透過率値が小さいために) どのピクセルでも単一のスラブだけが見えているマテリアルでは、見えていないスラブのビジュアライゼーションは示されません (または除外されます)。 |
制限事項および既知の問題
- Substrate は実験的機能であるため、実際の制作作業には使用しないことをお勧めします。
- プラットフォームのサポートおよびテストは現時点では不十分です。Substrate がベータ機能に移って実際の制作に使用できる状態になったときに、テストのカバレッジが大きくなる予定です。
- 機能および UX では、既存のアセットで動作が変わることや完全に無効になるといった変更が行われる可能性があります。
- モバイルは、モバイル フォワード シェーディング を使用している場合にサポートされています。
- パス トレーサーのサポートは実験的機能です。
- DirectX 11 (DX11) や Mac など、一部のプラットフォームやレンダリング パスでは問題が発生しており、完全には機能しない可能性があります。
その他のリソース
- Unreal Engine のマテリアルの未来 - GDC 2023
- State of Unreal ライブストリーム (タイムスタンプ:02:29:42)
-
機能別サンプル プロジェクトには「SubstrateMaterials」というレベルがあり、そのレベルでさまざまな例や Substrate マテリアルがどのように機能するかのデモを詳しく調べることができます。
Content Examples プロジェクトで Substrate を使用するには、このプロジェクトで Substrate を有効にする必要があります。Substrate を有効にした状態で使用できることが検証されているのはこのマップだけです。Content Examples プロジェクトの 1 つのインスタンスのみを使用している場合は、このレベルに対してのみ Substrate を有効にし、プロジェクトの他の部分を使用しているときは Substrate を無効にすることをお勧めします。